新任の先生のご紹介-重松大輝先生(生体力学研究室)

山口大学工学部機械工学科は,2024年4月1日付で3名の新任の先生をお迎えしました.新たに着任された先生からご研究紹介の記事をご寄稿いただきましたので,ここに紹介させて頂きます.お一人目は,生体力学研究室の重松大輝先生です(機械広報WG).

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分子動力学シミュレーションによる細胞膜破断の分子メカニズムの解明

すべての生き物は細胞からできており,細胞は外壁として細胞膜を必ず持っています.細胞が生きていく上で必要不可欠な細胞膜ですが,細胞の治療や研究目的で薬剤分子や遺伝子を細胞内へ人為的に送り込みたい場合,この膜がこれらの物質の侵入を阻んでしまいます.この問題を解決したのが,穿孔法と呼ばれる技術です.穿孔法では,電場や超音波などの刺激を細胞に与えることにより,細胞膜に小さな孔を一時的に開け,薬剤分子などが膜を通過できるようにします.刺激が強すぎると細胞が死んでしまいますし,弱すぎると細胞内に物質が十分に入ってくれません.なので,適切に刺激を与え,孔の形成をコントロールする必要があります.しかし,細胞膜の厚さは数ナノメートル,孔の大きさも小さいもので数ナノメートルと非常に小さいです.そのため,顕微鏡などで微小な孔の形成過程を直接観察することが難しく,刺激下での膜に何が起こっているかについては分からないことが多いです.

私は分子動力学法と呼ばれる原子1つ1つの動きを計算するシミュレーション方法を用いて,物理的な刺激を受けた細胞膜に一時的に孔が開いたり,もっと極端には膜が破れてしまう現象の解明に取り組んでいます.特に,膜を構成する分子の種類による孔の開きやすさの違いや何故そのような違いが生まれるのか,また,開いた孔の閉じやすさや挙動などに注目して研究を行っています.これらの研究が細胞操作技術や治療手法の発展の一助になると考えています.

図:分子動力学シミュレーションで再現された膜の断面(左)と引張下の膜に形成された孔(右)

図:分子動力学シミュレーションで再現された膜の断面(左)と引張下の膜に形成された孔(右)


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