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白石先生の岩木賞受賞業績の紹介

白石先生が受賞されました「第17回岩木賞」の対象業績「液中プラズマCVD法を基盤技術とした鋼表面へのダイヤモンド直接蒸着法の開発」の概要説明を白石先生にご作成頂きましたので、以下で紹介させて頂きます。

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本研究の基盤技術である『液中プラズマ法』は、その名の通り液体中にプラズマを発生させる技術です(図1)。プラズマは気体よりエネルギーが高い状態であるため、従来は『プラズマは気体中に発生する』というのが常識でした。液中プラズマ法の開発はこの常識を打ち破った点で革新的です。また、単に常識を打ち破っただけでなく、水素製造、機能性ナノ製造といった様々な分野の発展に寄与しました。本研究のテーマである『気相化学成長法(CVD法)を用いた材料のダイヤモンドコーティング』においては、①結晶成長速度が非常に速い、②簡易な装置で作動する、③安全性が高い、という重要かつ幅広いメリットをもたらしました。

figure1

図1:液中プラズマ(液体メタノール中)

ダイヤモンドコートする対象として魅力的な材料の一つが“鋼”です。鋼をダイヤモンドコートすると、高性能の工具、ヒートシンクなどを作製でき、これは自動車、航空機、パソコン、スマートフォン等の様々な製品の製造に役立ちます。しかし、鋼にダイヤモンドを直接蒸着(=コーティングすること)は不可能であるとされてきました。これは、(i)鋼表面にダイヤモンドの原料である炭素を供給しても、炭素は鉄の結晶内に侵入して(浸炭という)表面に堆積しないため、(ii)ダイヤモンドの熱膨張係数は鋼のそれと比較して1/10程度であり、CVDプロセス中の高温(約800℃)から室温に冷却される際、鋼は収縮しますが、ダイヤモンドはほとんど収縮せず、これによりダイヤモンドは鋼に圧縮され、割れて剥離するためです。  上記(i)への対策として、本研究ではステンレス鋼に含まれるCr, Ni 成分に注目し、これらが浸炭を抑制するはたらきがあるのではないかと考えました。また、(ii)への対策として、鋼表面にドリルで窪みのパターンをつけることで、圧縮応力が緩和され、またダイヤモンドが窪みに刺さる形になることで脱落しにくくなる(=アンカー効果)が得られるのではないかと考えました。これら2つの仮説について量子化学シミュレーションと実験により検討しました。結果、シミュレーションでは、Fe格子の中にCr, Niが存在すると浸炭が抑制されることが示されました。また実験では、鋼にCr, Niが含まれ、またその表面に窪みのパターンがつけられた場合、そうでない場合と比較して広範囲に高品質のダイヤモンドが蒸着され、上述の仮説が指示されました(図2, 3)。今後は窪みの形状とダイヤモンドの接着性などについてより詳しく調べることで、実用化を目指します。

鋼表面に蒸着されたダイヤモンドの電子顕微鏡像とラマンスペクトル. Cr, Ni, の効果, 窪みの効果が期待される場合.  (a):全体像, (b), (c):拡大像, (d):ラマンスペクトル.

図2:鋼表面に蒸着されたダイヤモンドの電子顕微鏡像とラマンスペクトル.
Cr, Ni, の効果, 窪みの効果が期待される場合.
(a):全体像, (b), (c):拡大像, (d):ラマンスペクトル.

鋼表面に蒸着されたダイヤモンドの電子顕微鏡像とラマンスペクトル. Cr, Ni, の効果, 窪みの効果が期待されない場合.  (a):全体像, (b), (c):拡大像, (d):ラマンスペクトル.

図3:鋼表面に蒸着されたダイヤモンドの電子顕微鏡像とラマンスペクトル.
Cr, Ni, の効果, 窪みの効果が期待されない場合.
(a):全体像, (b), (c):拡大像, (d):ラマンスペクトル.


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